2020/11/17
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- 本レポートは2020年11月13日(日本時間)時点の情報をもとに作成したレポートです。米国大統領選挙の情勢が変化した場合、内容を変更する場合がございます。
米国大統領選後の宇宙関連企業の見通しについて
2020年11月3日に投票が行われた米国大統領選は事前予想に反して接戦となりましたが、現状ではバイデン氏の次期大統領への当選がほぼ確実とみられる状況です。連邦議会選挙はまだ確定していないもの、上院が共和党優勢、下院は民主党優勢な「ねじれ」状態になる可能性が高いとみられています。
本レポートでは、米国大統領が共和党のトランプ氏から民主党のバイデン氏になった場合の宇宙関連企業に与える影響と見通しについてお伝えします。
バイデン氏の勝利がほぼ確実ななか連邦議会はねじれ状態に
- 勝利宣言以降、バイデン氏は政権移行チームを発足し、各国・地域の首脳と電話会談を行うなど、来年1月の大統領就任に向け着実に準備を進めています。一方、トランプ氏陣営は選挙に不正があると訴え、各州で提訴するなど敗北宣言を行っておらず、次期大統領が最終決定するには時間がかかる見込みです。
- 一方、連邦議会選挙は共和党が上院で過半数の議席を維持し、民主党が下院で過半数の議席を維持する見通しで「ねじれ」状態となる可能性が高いと見ています。
- バイデン氏の大胆な財政支出案は、インフラ投資(4.45兆米ドル)や育児・教育(2.7兆米ドル)を含め、10年間で10兆米ドルに達する見込みです。一方、金融規制の強化や、巨大企業の解体/権益の縮小などの政策は市場の懸念材料となっています。
- ただし、議会のねじれが見込まれることに加えて、来年以降の政策運営に関しては議会や民意に配慮した穏健な政策の様相が強まる可能性が高いと考えられます。
- 各種報道発表、アリアンツGI社の情報等を基に、東京海上アセットマネジメントが作成
- ※上記は過去の実績および将来の予想であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。
大統領選の結果に関係なく宇宙ビジネスは今後も進展すると予想
- 宇宙技術開発と探査は超党派の支持を得ている分野であり、共和党、民主党共に宇宙への投資をサポートする意向を大統領選前から示していることから、今回の大統領選挙によりバイデン氏が次期米国大統領となっても中長期的な宇宙ビジネスに対する見通しは変わらず、引き続き進展していくものと考えます。
- さらに、過去40年間の6人の大統領(共和党(ドナルド・レーガン、ジョージ・ブッシュ父、子、ドナルド・トランプ)、民主党(ウィリアム・クリントン、バラク・オバマ))の任期における平均防衛予算を見ると、前任の大統領の任期より増加しており、バイデン政権になってもこの流れに大きな変化はないと見ています。
バイデン次期政権発足後に予想される変化と宇宙ビジネスの見通し
- バイデン次期政権は2020年11月10日(米国時間)に、NASA(アメリカ航空宇宙局)の元主任科学者エレン・ストファン氏が議長を務めるNASA移行チームを発足しました。アリアンツGIでは、バイデン次期政権では、気候変動問題を重視していることから、トランプ政権下で積極的に進められていた月探査よりも気候変動のモニタリングや環境関連の衛星データの活用が更に進む可能性が高いと考えています。
- 宇宙関連事業への政府予算の水準は変わらないものの、トランプ政権下では深宇宙探査が重視されていたことで、予算配分が減らされていた地球科学部門(衛星を用いた地球の気温、北極の氷山のモニタリング、自然災害等のデータ収集、研究、分析)への資金供給が増えることが予想されます。
- 今後、宇宙ビジネスの最大の牽引役は、引き続き民間企業による商業投資であると考えます。過去のオバマ政権や現在のトランプ政権ともに支持しており、バイデン次期政権も宇宙の商業投資を強く支持していくと期待しています。
- 2020年10月末時点における東京海上・宇宙関連株式マザーファンドの保有銘柄のうち、バイデン次期政権において今後恩恵を受ける可能性があると考える宇宙関連企業の一例をご紹介します。
企業例 | 企業概要および恩恵を受ける可能性のある事業 |
テスラ(米国) |
高性能電気自動車などの設計・製造・販売を行っています。同社のCEOのイーロン・マスク氏が率いるスペースX(未上場)社と通じて再利用可能なロケットの製造・運営、宇宙旅行などの宇宙関連ビジネスに従事しています。
<バイデン政権下で恩恵を受ける可能性のある事業>
電気自動車、太陽光発電、スマートグリッドシステム など
|
チャート・インダストリーズ(米国) |
真空断熱格納容器、熱交換器、コールドボックス、およびその他の低温機器を提供する金属加工メーカーです。宇宙関連ビジネスでは、ロケットの発射・推進に必要な超低温ロケット推進剤の貯蓄庫や供給システムを提供しています。
<バイデン政権下で恩恵を受ける可能性のある事業>
水素エネルギーの供給 など |
ケマーズ(米国) |
金生産、石油精製、農業およびその他の産業向けの二酸化チタン、冷却材、工業用フッ素ポリマー樹脂、工業用化学品、特殊化学品などを製造・販売する化学メーカー。
宇宙関連ビジネスでは、同社のテフロンTMフッ素ポリマー樹脂が火星探査用ローバーなどに活用されていたり、通信ケーブルの電気効率を高める素材などを提供しています。
<バイデン政権下で恩恵を受ける可能性のある事業>
水素燃料電池の膜 など |
ボール(米国) |
飲料、食料品、および家庭用品向けの金属製の容器を製造するほか、衛星等宇宙関連の金属素材を手掛け、全体の売上の約10%が航空宇宙事業となっています。
<バイデン政権下で恩恵を受ける可能性のある事業>
リサイクル包装パッケージ など |
- 各種報道発表、アリアンツGI社の情報等を基に、東京海上アセットマネジメントが作成
- ※ 上記記載の企業はスペースX(未上場)を除き、2020年10月末時点の東京海上・宇宙関連株式マザーファンドにおける保有銘柄です。
- ※ 上記記載の銘柄への投資を推奨するものではありません。また当ファンドへの組み入れ等を示唆・保証するものではありません。
- ※ 上記は過去の実績および将来の予想であり、将来の運用成果等を示唆・保証するものではありません。