
私は長らく日本株運用のファンドマネージャーとしてキャリアを歩んできました。今回は株式運用を中心に、大事にしている投資スタイルやチーム運用について紹介させていただきます。
私たちは、企業の「利益成長」に着目して投資を行うグロース投資という手法にこだわりを持っています。1990年代初頭、日本株式市場では小型株効果・バリュー株効果のアノマリーが確認されていたため、多くの運用機関がバリュー投資を選好していました。しかし私たちは、解散価値に着目したバリュー投資ではなく、継続企業として企業の本源的な目的は「利益成長」にあり、その成長こそが全てのステークホルダーを幸せにする唯一の解だと確信していたため、あえてグロース重視の運用スタイルを選択しました。この信念のもと、GARP(Growth at a Reasonable Price)という運用スタイルを確立し、利益の成長性を第一優先に置き、その上で適正な株価水準を考慮するという投資アプローチを実践してきました。
この利益成長へのこだわりは、具体的な銘柄選択においても表れています。グローバルな競争力、成長性や希少性を持ち、海外の投資家からも評価される企業や優れた経営者が率いる企業を重視してきました。また、持続可能な成長が期待できる企業を厳選し、サステナビリティの観点も組み入れながら投資を行っており、このアプローチは現在のESGインテグレーションにも自然な形で繋がっています。
30年以上が経過した今も私たちは変わることなく、グロース重視の運用スタイルを貫いています。日本経済は少子高齢化など多くの問題を抱えていますが、社会や企業が生産性を高めることで成長力を向上させることこそが社会課題解決の大きな鍵であると考えており、私たちはこのような社会変化を牽引できる企業に投資を通じて支援していくことの重要性が、ますます高まっていると考えています。
私たちは、企業調査のスペシャリストであるアナリストと、投資判断のプロフェッショナルであるファンドマネージャーが、対等な立場で協力し合う「チーム運用」を実践しています。TMAMの「投資哲学」である徹底的な調査・分析を行うアナリストと、それを基に投資判断を行うファンドマネージャー、この協働こそが私たちの「チーム運用」の根幹であり、長年の経験を通じて、互いが切磋琢磨できる組織体制を築いてきました。
私たちの運用力は、「ファンドマネージャー・アナリスト個々の力量×人数×組織力」という方程式で表されます。この方程式が掛け算で表されている点がポイントであり、アナリストとファンドマネージャーという両輪が徹底的に議論をして、互いを高め合うチームアプローチにより、グローバルに競争優位性のある質の高い運用が実現できると考えています。
現在まで過去の様々な危機的状況に直面するたびに、私たちは組織の在り方を見直してきました。双方向のコミュニケーションはファンドマネージャーとアナリストとの上下関係からは生まれないとの判断から対等な関係を重視しており、部署や役職の垣根を越えた自由闊達なコミュニケーションにより、互いの専門性を最大限に活かしながら、「成長企業への投資を通じて社会の生産性向上につなげる」という理念の実現と持続的な運用成果の追求に取り組んでいます。