2026.10.30
年間2万件の漏水事故を宇宙から解決?JAXA認定ベンチャーが挑む「宇宙水道局」とは

インフラの老朽化が原因で年間約2万件の漏水事故が発生
大部分が地下に埋設されている上下水道管。その劣化や損傷は、漏水や道路陥没といった形で突然表面化し、生活や都市機能に重大な影響を及ぼします。
国土交通省によれば、日本では年間2万件以上の漏水事故が発生し、その主要原因は設備の老朽化です。水道管や道路、橋梁など現在の日本のインフラの多くは、1960年代の高度成長期に整備されました。一般にインフラの耐用年数は約50年(上水道の法定耐用年数は40年、下水道は50年)とされ、水道管について言えば、国土交通省は2040年3月時点で上水道管路の約41%、下水道管渠(かんきょ)の約34%が敷設後50年以上を経過するとしています(2023年3月時点推計)。
上下水道管の維持管理が抱える課題
国土交通省は、全国の自治体に上下水道を含む地下埋設物の点検の徹底を求めているのですが、そこには大きな壁が立ちはだかります。
まず、目に見えない場所で進行する劣化や損傷を地上から正確に把握することは困難であり、点検には時間がかかります。また、近年では調査を担う技術者の不足も課題視されています。
次に、費用の問題です。日本の老朽化した上水道管路は地球の約4.7周分にあたる約18.9万kmに達します(日本水道協会「水道統計」2023年度)。水道管の更新費用は1kmあたり2億円と言われていることから、自治体にとっては大きな負担となります。現在、老朽化した管路のうち、1年間に更新される割合は0.65%に過ぎず、今後管路の老朽化が一層進むことが懸念されます。こうしたことから、水インフラを守り続けるためには、新たなアプローチが求められています。
宇宙ビッグデータとAI分析で漏水リスクを診断する「宇宙水道局」
こうした中で注目されているのが、衛星データを活用して持続可能な水道事業の実現を支援するサービス。その名も「宇宙水道局」です。取り組んでいるのは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が認定する宇宙ベンチャー企業、「株式会社天地人」です。同社はJAXAから日本で初めて出資を受けた民間企業でもあります。
「宇宙水道局」は、人工衛星から得られる宇宙ビッグデータとAI分析を組み合わせて、水道管の漏水リスクを診断するシステムです。
衛星データと地上データを組み合わせて分析
「宇宙水道局」は、人工衛星から地下の水道管や漏水箇所を直接見るシステムではありません。人工衛星が観測した地表面温度や地盤変動、降水量などから、水道管を取り巻く環境を広域に捉えることが特長です。
分析には衛星データだけでなく、土壌や地質などの地上のデータや、水道事業体が保有する管路の材質や敷設年、過去の漏水履歴なども使用します。これらの異なるデータを組み合わせてAIを活用し、漏水リスクを相対的に診断しているのです。
診断結果は地図上に表示され、調査員が優先的に確認すべき場所を判断する材料として活用されます。衛星やAIが漏水の有無を断定するのではなく、限られた人員と予算の中で、現地調査を効率的に行うための支援情報を提供する仕組みです。
「宇宙水道局」の普及で効果的に水道インフラを管理
2023年4月からサービスの提供を開始した「宇宙水道局」は、2026年9月、延べ導入事業体数が100を突破しました(契約更新を含む)。
水道は生活に欠かせないライフライン。「宇宙水道局」は水道インフラの課題を可視化し、老朽化が引き起こす漏水事故のリスクを減らすことに貢献するだけでなく、水道管の漏水対策を効率化してくれる革新的なサービスとして関心が高まっています。衛星を活用した水道インフラ管理システム「宇宙水道局」が今後さらに普及していけば、より効果的な水道の維持管理が実現することでしょう。
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